火鳳燎原』第一巻

 各話の副題
 主な登場人物

  ここには各話のあらすじを載せます。

  登場人物の台詞は緑色、
  解釈が怪しげな部分は赤くなっています。


  ここには、補足的な解説や私見を載せます。



 後漢末、宦官と外戚によって政治は腐敗し、力を持った地方豪族の圧政により
民衆は大いに苦しんだ。

 西暦184年、太平道による黄巾の乱が勃発、都を震撼させた。
この戦は各地の軍閥をより強大にした。

 西暦189年、皇太子・劉弁が即位し、外戚と宦官の争いは激化した。
大将軍・何進は大宦官・蹇碩を殺害し、その他の宦官を誅殺するため
西涼太守である董卓を都に呼び寄せた。
しかしその軍隊の到着を待たず、宦官は先手を取って何進を殺害。
董卓は軍を率いて上洛し、朝廷を支配した。

 同年、董卓は劉弁を廃しただけでなく、九歳の劉協を立て傀儡とし、
更に自ら相国となり朝政をほしいままにした。

 西暦190年、董卓の暴政に対し、各地の州牧たちは董卓討伐の兵を挙げた。
これが歴史にいう「関東軍」であり、袁紹がその盟主に推挙された。
同年、数十万の大軍が洛陽へ進発した。

 これにより天下は大いに乱れた。


 この文章は第二回のものですが、第二回の方に書くと全体の文が長くなりすぎるので、
独立して先に紹介しておきます。
内容的に見ても、第一回より先に時代背景の説明があった方が分かりやすいでしょうし。
 ちなみに原文・邦訳ともに、黄巾の乱が164年に起こった事になっていますが、
これは184年の間違いだと思うので、ここでは直しておきました。



第一回 王者的醒覚
司馬懿、小孟、大伯、三叔、四叔、司馬孚、司馬馗、司馬恂、司馬進、司馬通

 河内の富豪・司馬家において、一族を挙げての重大な会議が行われていた。
董卓の第一の智嚢・許臨が、河内の富豪たちを招き入れようとしているからだ。

 天子を擁したことで権力を手にした董卓。彼は天子の廃立を行った。
これに対し、天下の諸侯が挙兵するのは間違いない。
そして洛陽進攻の際には、彼らの大軍は河内に駐屯するだろう。
もし董卓に従えば、諸侯の大軍に「董卓討伐」の名の下に略奪され、
従わなければ、彼が天下を取った後、報復されるのは明らかだ。

 そこで司馬家の若き当主・司馬懿は許臨の暗殺を決定した。
許臨を殺せば、董卓は片腕を失ったも同然。
そして司馬家に手を出せば痛い目にあうという宣伝にもなり、
諸侯も敢えて略奪しようとは思わなくなるはず。

 翌朝、司馬懿は部下の小孟に許臨暗殺を命じた。


 司馬懿の夢に関する部分はすべて省きました。

 邦訳版について今更あれこれ言いたくないんですが、これだけはしっかりして欲しい点が
二つあります。
一つは人物間の敬称(大伯とか二哥とか老三とか)を正確に訳して欲しい。
訳せないなら手をつけず、そのままにしておくべきでしょう。
もう一つは、文中にちゃんと句読点を使って欲しい。
日本では句読点を使う漫画は少ないかもしれませんが、長文が多い火鳳にこそ使うべきです。
原文では使ってあるだけに、読み比べると邦訳版の読みづらさが際立っています。



第二回 残存亦没路
燎原火、郭昂、董卓、呂布、劉弁、許臨、趙賢、許江

 董卓は上洛の際に、道すがら無数の富豪たちの財産を強奪し殺戮した。
さらに、兗州の各富豪のもとへ遊説し、数十億両の軍費を獲得した。
これを献策したのが董卓の寵臣にして西涼一の名士、そして天下一の軍師と称される
智冠天下――許臨その人である。

 許臨によって河内の富豪は司馬家を除いて皆、董卓の手の内となった。
許臨は彼らから得た財産を船に乗せ、一路都へと向かっていた。
その途中、船の行く手を遮る者が現れた。
暗殺組織、残兵である。

 許臨の護衛として船に同乗していた彼の配下・趙賢は、息子である趙火に
許臨の護衛を命じた。

「公子!お父上がお呼びです!」
「もう聞こえてる。俺は耳はいいからな」



 許臨の肩書きが多すぎてワラタ。
そして許臨の計略と呼んでいいのかすら分からない計略にもワラタ。



第三回 兵敗如山倒
燎原火、張雷、郭昂、許臨、趙賢、許江

 残兵の暗殺者が船に飛び乗り、護衛兵を蹴散らした。
許臨は逃げようとするが、追い詰められてしまう。
間一髪のところで趙火が隣の船から飛び移り、暗殺者に斬りかかった。

 趙火が隻腕の男を倒し一息ついた次の瞬間、船の側壁につかまっていた男が
許臨を襲撃した。暗殺者は一人ではなかったのだ。
趙火の目の前で許臨は暗殺者によって両断され、趙賢も殺されてしまった。


 主人公が必殺技を使う辺りが少年漫画的というか武侠漫画的です。
しかし、必殺技は今回限りで二度と登場しません。
個人的には武侠漫画よりも歴史漫画が読みたいので、この方向転換はありがたいですね。



第四回 残兵之首
燎原火、小孟、張雷、郭昂、許臨、董卓、呂布、劉備、関羽、張飛

 許臨は生きていた。殺されたのは身代わりだったのだ。
許臨は誰も自分を殺す事などできないと自慢げに言った。

 しかし残兵はまだ帰還していなかった。
川岸に残兵の独眼の首領が、下手人を従えて立っていた。
趙火は彼のことを知っていると言う。
趙火が言うには、残兵の首領は許臨に近づくために趙賢の義理の息子になった。
そして趙賢には実の息子はいない…。

 この趙火こそ、残兵の首領・燎原火だったのだ。
彼は敵中にありながら平然と言った。
「十数人か、数百人とやるのに比べりゃ楽勝だ」

(わしの麾下には猛将が大勢いる……それは周知のこと……。
万人に敵する力無くして、わしをたやすく殺せはしない…。
だが…残兵の首領の計画は、わしの思慮の外っ……!
この小僧…狂人でないなら、こやつは……呂布に匹敵する怪物っ……!)

 三日後、董卓に面白い物が届いた。
それは兵書や武器以上に、怪物の力を強められる物だった。
「許臨…この呂奉先が誓う!あなたの仇に報いると!」

 許臨の死によって、兗州の富豪たちによる上納は立消えとなった。
しかし、河内に駐屯した関東軍が、董卓を支持した富豪たちの財産を略奪した。
 膨大な軍事費を得た関東軍は洛陽へと進軍した。
しかし呂布の頑強な抵抗に遭い、さらに軍閥同士が疑心を抱きあったため、
戦線は一時膠着状態に陥った。

 それは三人の怪人の出現まで続いた。


 劉備たちは道を間違えて経陽に来たのに、次回まるで予定していたかのように
「一城を奪いて、二城を救う」の計を実行します。
これは劉備が臨機応変に対応したと考えれば良いんでしょうか?



第五回 桃園三匪
劉備、関羽、張飛

 経陽城にて、董卓の配下を名乗る男・劉備による略奪が行われていた。
彼は戦争に苦しむ民衆からも財物を容赦なく奪いつくした。

 略奪があらかた済んだとき、経陽に向かってくる関東軍の影が現れた。
奪った財物を引いて、一目散に逃げ出す劉備軍。
民衆は彼らに石と罵詈雑言を投げつけた。

 劉備軍と入れ違いで、関東軍が経陽城に入城した。
劉備軍に略奪された民衆は、関東軍を温かく迎え入れた。
その歓迎ぶりは、長い間戦争にあけくれた兵士たちに深い感動を与えた。
関東軍は経陽で略奪するつもりだったが、それさえもきれいに忘れさせるほどに。

 経陽城から十五里離れた護陽城は、関東軍に略奪され荒れ果てていた。
そこへ劉備が現れ、先ほど奪った財物を民衆に施した。
民衆は彼らを熱烈に歓迎した。

 劉備は経陽では董卓軍を名乗る事で民衆の恨みを董卓に向けさせた。
そこへ関東軍が到来すれば、当然熱烈に歓迎される。
民衆による温かいもてなしは関東軍の略奪を止めた。
もし関東軍に略奪されていたら、経陽城も護陽城のように荒廃していただろう。
劉備の行動は、結果的に経陽の民の命を救ったのだ。

「いずれは経陽の民が兄者の苦心を理解する日も来るだろう」
「この世に略奪して感謝されるような男は一人だけ……
これが兄貴の魅力だ。
それに引き換え俺は、悪人しかやれん」
「太守の事を気にするのはやめろ。
貧困に喘ぐ民に比べれば、高官は厚禄を受けているのだ。
多少の苦を受けるのも仕方のない事」

「一つの城を略奪して二つの城を救う、こんなおかしな事もそうはあるまい」
「ああ、こんなおかしな事、俺たちの「バカな」兄貴しか思いつかねえ」



 以下は邦訳版についての愚痴なんで、読みたくない方は飛ばすが吉。

 邦訳版のこの回の最後のページの関羽の台詞の訳は酷いですね。
「ある城からは略奪し、またある城は救った」
では、劉備の計略の意味が変わってしまうじゃないですか。

 2chスレに誤訳を指摘したメールを編集部に送ったという方がいましたが、
単行本化の際に多数ある間違いを直さないところを見ても、編集部の怠慢が目立ちます。
(流石に、孟さんと「チャンスだ!」だけは直ってましたが)
大体、(翻訳者ではなく)編集者自身、火鳳の内容をちゃんと理解しているのかと。
「現地で大人気だから、とりあえずツバつけとこう」という意図が垣間見えて、
正直ムカつきますわ。



第六回 仲達的智謀
司馬懿、燎原火、小孟、張雷、郭昂、大伯、三叔、四叔、
司馬馗、司馬恂、司馬進、司馬通

 西暦190年、関東軍十二万が集結し河内を根拠地とした。

 司馬家の長老たちは今日も商売の話をしていた。
司馬懿がいい儲け話があると言う。
 その儲け話とは洛陽城の建造という途方も無い話だった。
叔父たちは驚くが司馬懿は続ける。
 西涼からの補給線が関東軍によって切られれば、董卓は間違いなく敗れる。
兗州からの補給も途絶え、兵士は望郷の念に駆られる。
これでは士気の低下は避けられず、すぐにでも董卓は西涼に近い長安に移るだろう。
その後、誰が洛陽に進駐し得をするか、董卓は分かっている。
だから董卓は洛陽を破壊する。
 洛陽が破壊されたとしても、中原の軍事要所であることは変わらず、
必ず関東軍の諸侯らが手にしようとするはず。それらを見越して、
近辺の大工や建築材を買い集めておくべきというのが、司馬懿の説だった。

 これを聞いて喜ぶ叔父たち。しかし洛陽に出仕した司馬懿の兄・司馬朗が
いまだ帰ってこないというのだ。

 その夜、司馬懿の元に燎原火ら残兵が集った。指令は司馬朗の救出。
諜報員の報告によると、洛陽内の関東軍の親族が董卓に捕らえられたという。
燎原火らは残兵の首領の証と偽造戸籍表を受け取り、洛陽へ出発することとなった。
 一人、小孟だけが浮かない顔をしていた。いかな彼とて、歌妓を演じるのは
難易度が高すぎるからだ。
しかし司馬懿は、小孟の役目は宮中から内応する重要なものだと言う。
小孟が渡された戸籍表にはこう書かれていた。

洛陽王氏義女 【貂 蝉】


 司馬懿、先読みしすぎだろ。






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