経陽城にて、董卓の配下を名乗る男・劉備による略奪が行われていた。
彼は戦争に苦しむ民衆からも財物を容赦なく奪いつくした。
略奪があらかた済んだとき、経陽に向かってくる関東軍の影が現れた。
奪った財物を引いて、一目散に逃げ出す劉備軍。
民衆は彼らに石と罵詈雑言を投げつけた。
劉備軍と入れ違いで、関東軍が経陽城に入城した。
劉備軍に略奪された民衆は、関東軍を温かく迎え入れた。
その歓迎ぶりは、長い間戦争にあけくれた兵士たちに深い感動を与えた。
関東軍は経陽で略奪するつもりだったが、それさえもきれいに忘れさせるほどに。
経陽城から十五里離れた護陽城は、関東軍に略奪され荒れ果てていた。
そこへ劉備が現れ、先ほど奪った財物を民衆に施した。
民衆は彼らを熱烈に歓迎した。
劉備は経陽では董卓軍を名乗る事で民衆の恨みを董卓に向けさせた。
そこへ関東軍が到来すれば、当然熱烈に歓迎される。
民衆による温かいもてなしは関東軍の略奪を止めた。
もし関東軍に略奪されていたら、経陽城も護陽城のように荒廃していただろう。
劉備の行動は、結果的に経陽の民の命を救ったのだ。
「いずれは経陽の民が兄者の苦心を理解する日も来るだろう」
「この世に略奪して感謝されるような男は一人だけ……
これが兄貴の魅力だ。
それに引き換え俺は、悪人しかやれん」
「太守の事を気にするのはやめろ。
貧困に喘ぐ民に比べれば、高官は厚禄を受けているのだ。
多少の苦を受けるのも仕方のない事」
「一つの城を略奪して二つの城を救う、こんなおかしな事もそうはあるまい」
「ああ、こんなおかしな事、俺たちの「バカな」兄貴しか思いつかねえ」