関東軍の女――孫淑によって、燎原火は関東軍の隠れ家に幽閉されてしまった。
しかしこれは司馬懿の立てた計画の一部であり、燎原火は関東軍の内情を探るため
わざと捕まったのだった。
孫淑の婚約者にして関東軍軍師・袁方の計画では、祭祖節である明晩、
城内に潜伏している仲間をこの隠れ家に集合させ、最後の準備をするのだという。
その話は燎原火の耳にも聞こえていたが、袁方は彼を用済みと見て開放した。
それは袁方の計画の一部だった。
つかませた偽の情報は、必ず董卓軍に漏れるだろう。
それを聞けば、董卓は城内の関東軍を一網打尽にすべく兵を召集する。
そのために必要な兵数は千人どころではなく、しかも城外から召集するには
時間が足りないため、城内の兵を動員するしかない。
となれば当然、牢の守備が手薄になる。
その隙を突いて、周囲に伏せておいた仲間たちに牢を破らせるのだ。
更に、袁方はこの隠れ家を格安の値で売り払っていた。
「祭祖節の夜に一度に引越しを済ませる」という条件付きで。
これだけの大きさの邸宅に家財を運び込むには、数百人の人手が必要となるだろう。
そして袁方たちは今晩中にここを引き払う手はずとなっている。
つまり袁方は、邸宅の買い手とその従者たちを関東軍の身代わりにするつもりなのだ。
この計画を聞き、袁方の智謀に舌を巻く黄蓋たち。
「孫淑よ、お前には人を見る目があるな。
人は許臨を智冠天下と呼んだが、
天下無双とは出会わなかったのだな」
その頃、司馬朗は呂布の尋問を受けていた。
司馬朗は激しい拷問を受けても白を切り続けるが、呂布はあくまでも司馬家と
関東軍の関係、そして許臨暗殺について疑っていた。
「許臨は兗州で死に、残兵は兗州でのみ殺める。
そして兗州の人質はお前一人だけだ!
同時に、俺は感じるのだ……
許臨を殺した奴はもう来ていると!」