火鳳燎原』第二巻

 各話の副題
 主な登場人物

  ここには各話のあらすじを載せます。

  登場人物の台詞は緑色、
  解釈が怪しげな部分は赤くなっています。


  ここには、補足的な解説や私見を載せます。


第七回 英雄傳説
燎原火、呂布、劉宗

 関東軍の将29人が殺された。しかも彼らは全員が隻眼だった。

 巷では河内司馬家の隻眼の刺客が、許臨と15人の将を暗殺したという噂が流れていた。
しかし袁紹軍の隻眼の将・劉宗は、この噂は単なる作り話に過ぎないと言う。

 戦が膠着状態に陥った今、流言こそが最も効果的だ。
そのため、敵軍の戦神・呂布の伝説に対抗できる英雄の虚像を作り上げる必要があった。
劉宗こそがこの噂を広めた張本人だったのだ。
彼は、言い換えれば自分こそが隻眼の刺客なのだと、誇らしげに語った。

 そのとき、一人の騎馬武者が営内に現れた。
「貴様、何者だ!?」
「大漢温侯!」
「戦神りょ、りょ、呂布!?」
(たった一人で四方五里の軍営の中心に侵入しただと!?)

「お前で三十人目か。
兄の仇だ!見逃すくらいなら皆殺しにしてくれる!」

 いくつもの首が捧げられた許臨の墓前に、燎原火はいた。
そこへまた一つ、首が捧げられようとしていた。
「天下一の智嚢よ、当ててみな…
俺が今日、何をしにここへ来たか。
あんたが知ったら、また驚いたに違いねえ!」



 呂布が温侯に封じられるのは董卓を殺した後だったと思うんですが、
火鳳ではこの時点で既に温侯と呼ばれています。
この改変に意味があったのか、私には分かりません。
(スマソ。これは私の間違いでした。
確かに正史では上記の通りなんですが、後で演義を読み返してみたら
董卓の生前に既に温侯と呼ばれてました。
どちらかといえば演義よりの火鳳では、これは改変でも何でもありませんね。
重ね重ねスマソ)


 あと、戦神呂布の邦訳が軍神呂布となっていますが、呂布のあだ名は
"無敵戦神"なので、ここは変えるべきではないと思います。
フヒヒw揚げ足取りばっかしてサーセンw



第八回 覇者之血路
司馬懿、燎原火、司馬朗、四叔、司馬孚、司馬馗、司馬恂、司馬進、
孫淑、黄蓋、董卓、劉協、袁隗

 漢の首都・洛陽。外戚や高官が皇帝に近づくべく、家族のうちの重要な人物たちを
ここに送り込んでいた。
関東軍が董卓討伐のため集結した後、董卓はすぐさま重要人物たちを軟禁した。
関東軍の将軍たちの家族、漢室の名族の家族、合わせて千人以上になる人質は皆、
牢に繋がれていた。その中には司馬家の長男・司馬朗も含まれていた。
彼ら人質たちは関東軍にとっての最大の障壁となった。

 この苦境を打破するため、関東軍は祭祖節に人々が墓参りのために帰郷することを利用した。
各軍の精鋭たちを、この機に乗じ洛陽に入城させるのだ。
入城の手続きのため並ぶ人々の中に、関東軍の者たちがいた。
そしてそこには、趙賢の息子・趙火として潜入する燎原火の姿もあった。


 本当は孫淑と黄蓋の台詞を翻訳したかったんですが、下手に訳すと
ボロが出そうなので今回はやめておきました。
他人を批判するくせに、自分は逃げに徹してサー(略

 彼らの台詞を翻訳する際の注意点として、孫堅の息子たちと譜代の将たち
(程普・黄蓋・韓当・朱治)が、互いに実の親類のように接していることが挙げられます。
彼らの台詞だけを見ても、それが分かるように訳していきたいと思います。



第九回 闖關
燎原火、孫淑、黄蓋、華雄

 燎原火は新任の校尉として入城者の審査をしていた。
彼が入城する際に目をつけていた者たちの番が来た。
彼らはやはり関東軍で、自分たちを入城させるよう燎原火と部下の兵を脅した。
燎原火にはある計画があったため、おとなしく彼らに従った。

 彼らが洛陽の街を歩いていると、董卓軍の将・華雄とすれ違った。
そのとき、人質に取られた兵が華雄に朝の挨拶をした。今は昼なのにだ。

 それは暗号だった。彼らが侵入者と見るや、華雄は兵を呼び集めた。
関東軍の者たちは仲間の女を逃がし、その場で戦闘を開始した。
「貴様が頭領か。その訛り、会稽人だな?
王朗軍か、それとも孫堅軍か?」
「孫堅軍の黄蓋!」
「相手にとって不足は無い!この華雄の相手をしてもらおう!」
「望むところよ!」

 女は兵士たちに追われていた。彼女は燎原火を人質に取り、敵から馬も奪い取ったが、
行き着いた先は行き止まりだった。
しかも運が悪い事にそこには兵部があり、大勢の兵士たちが待ち構えていた。


 黄蓋たちが孫淑を"淑子"と呼ぶのが結構好きなんですが、やっぱり訳しにくいですね。
"阿淑"とかなら訳さずそのままでいいんでしょうけど、"淑子"だと中途半端に
日本人の名前みたいで、そのままってわけにもいきませんし。
難しいところです。



第十回 北門樓之亂
燎原火、孫淑、華雄

 兵士たちは遊び気分で女と一対一で戦っていた。
だが、彼女が何人か倒したところで兵士たちは一斉に襲い掛かった。
兵士が彼女の服に手をかけたとき、犬小屋の中から[金票](ひょう)が飛んできた。
「そんなとこに隠れて、何が好漢か!」「出てきやがれ!」
「てめえらに比べりゃマシだ」
「包囲しろ!」「おう!」
「無駄だぜ。全員死ぬんだからよ!」


 次の瞬間、そこには兵士たちの死体が転がっていた。
血濡れた剣を持った花瓶売りの小僧もいたが、女が呼び止めるのも聞かず逃げ去ってしまった。


 燎原火のモノローグは全部省きました。
23、24巻を読んだ後にここを読むと、燎原火の心境の変化が感じられます。
あれだけ悲惨な目にあいまくれば、人生観の一つや二つ変わるわな。



第十一回 天下無雙
燎原火、張雷、司馬朗、呂布、袁方、孫淑、黄蓋、廖蘭、魏通、慮谷、白勇

 関東軍の女――孫淑によって、燎原火は関東軍の隠れ家に幽閉されてしまった。
しかしこれは司馬懿の立てた計画の一部であり、燎原火は関東軍の内情を探るため
わざと捕まったのだった。

 孫淑の婚約者にして関東軍軍師・袁方の計画では、祭祖節である明晩、
城内に潜伏している仲間をこの隠れ家に集合させ、最後の準備をするのだという。
その話は燎原火の耳にも聞こえていたが、袁方は彼を用済みと見て開放した。

 それは袁方の計画の一部だった。
つかませた偽の情報は、必ず董卓軍に漏れるだろう。
それを聞けば、董卓は城内の関東軍を一網打尽にすべく兵を召集する。
そのために必要な兵数は千人どころではなく、しかも城外から召集するには
時間が足りないため、城内の兵を動員するしかない。
となれば当然、牢の守備が手薄になる。
その隙を突いて、周囲に伏せておいた仲間たちに牢を破らせるのだ。

 更に、袁方はこの隠れ家を格安の値で売り払っていた。
「祭祖節の夜に一度に引越しを済ませる」という条件付きで。
これだけの大きさの邸宅に家財を運び込むには、数百人の人手が必要となるだろう。
そして袁方たちは今晩中にここを引き払う手はずとなっている。
つまり袁方は、邸宅の買い手とその従者たちを関東軍の身代わりにするつもりなのだ。

 この計画を聞き、袁方の智謀に舌を巻く黄蓋たち。
「孫淑よ、お前には人を見る目があるな。
人は許臨を智冠天下と呼んだが、
天下無双とは出会わなかったのだな」

 その頃、司馬朗は呂布の尋問を受けていた。
司馬朗は激しい拷問を受けても白を切り続けるが、呂布はあくまでも司馬家と
関東軍の関係、そして許臨暗殺について疑っていた。
「許臨は兗州で死に、残兵は兗州でのみ殺める。
そして兗州の人質はお前一人だけだ!
同時に、俺は感じるのだ……
許臨を殺した奴はもう来ていると!」



 改めてこの辺りの話を読み返したら、なんか腹立ってきたんですが。
無関係の一般人を巻き込む袁方に対し、腹の底にドス黒いものが溜まっていくのを感じます。
他の連中も、何百人もの罪の無い人間が次の日に死ぬかもしれないってのにヘラヘラしやがって。
外道だろ、こいつら。

 同じように他人を殺すなり利用するなりする郭嘉や[广+龍]統の計略は、
感覚が麻痺するくらいスケールがでかいうえ、なおかつ彼らは自身の大義のもとに
行動しているからまだ格好がつきます。
それに原典通りであれば、郭嘉は志半ばで病死、[广+龍]統は八奇の中で唯一戦死と、
悲惨な末路をたどるのが分かっていますしね。
後に報いを受けるのだから、今の内にもっとバンバンやっちゃってくださいと。

 まあ↑は建前で、本音は私が郭嘉と[广+龍]統が好きだから許せて、
袁方が嫌いだから余計に腹が立つってだけなんですけどね。

 で、袁方。奴にもそれ相応の末路を用意して欲しいんですが、こいつは
やたら美化されている印象があるので(18巻参照。この時代の中国に薔薇て。
追記&訂正 スマソ。よく見たらあれは薔薇じゃなくて"茶花=椿"でした。
本文中に知らない単語が出てきたら、ちゃんと辞書を引かないと駄目ですね

それもどうなることやら。



第十二回 絶世佳人
燎原火、貂蝉(小孟)、司馬朗、董卓、呂布、華雄、張温

 呂布と司馬朗の前に、燎原火が趙賢の息子・趙火として現れた。

 燎原火は呂布と許臨の友情を利用し呂布の信任を得て、容易に洛陽の兵部に侵入した。
そして父の仇をとる振りをして直接司馬朗の居場所を探ることで、脱獄時に探す手間を省いたのだ。

 そこへ華雄が現れ言った。
「ここに関東軍の内通者がいる。
祭祖節に人質を救うつもりだ。
こいつは先ほど、我々が監視を続けている張家荘から出て来た…。
内通者には死あるのみよ!」

 董卓の屋敷で文武の官を招いた宴が催されていた。
そんな場で司空・張温が、董卓に遷都を取り止めるよう諌めた。
機密を漏らした張温とその関係者を殺すよう命じる董卓。
宴席が一転して惨劇の場に変わる中、西涼の鎮魂歌が流れ出した。

 楽師は言った。
「将士たちは遷都に納得しないでしょう。
西涼兵は遠方の貧しき地で命をかけて外敵に当たりながら、
功は全て他人の手に渡り、諸侯からは軽蔑されてきました。
積年の恨みを除かず、人心もまとまらないとあらば、
大業の妨げとなるのは必至……」
「楽師よ、お前には彼らを説得する方法があるのか?」
「一つの曲が一つの理を語り、一つの舞が千の憂いを晴らすでしょう」
「やってみろ」
「この貂蝉、謹んでお受けします」



 この辺は説明文が多くていけませんや。
文章量が多いのは今も同じですけどね。



第十三回 獣之舞
貂蝉(小孟)、董卓

 貂蝉が舞い歌い始めた。その詩は許臨の"望郷行"だった。
故郷に残した両親や妻子を想う兵士の心情をつづったこの詩に、将士たちの心は
大きく揺り動かされた。

 そのとき董卓が立ち上がり言った。
「名声と欲望のため、我らが忘れてしまったものがある。それはなんだ!」
 群衆の中から声が上がった。
「理想だ!我らの理想は、より偉大な故郷を作ることだ!」
「理想のためなら、この腐った洛陽など何ほどのこともなかろう?
 皆に問う!今、我らが有するものは何だ?何だ?
 天子だ!我らの手中には天子がある!
 どこにあっても万民に敬慕される天子、その天子が我らの手中にあるのだ!」


 董卓の言葉に沸く将士たち。
しかしその喧騒も束の間、彼らは主の次の言葉を静かに待った。
静寂の中、貂蝉も場の空気に感化され興奮を抑えられない。
「明後日!我らは長安へ発つ!
 そして洛陽より、より偉大な都をつくるのだ!」


 その言葉に歓喜する将士たちを見て、貂蝉は董卓に覇者の姿を見出した。
彼は董卓に抱きすくめられても抵抗できずにいた。
「もしお前が男なら!もう一人の許臨となっただろう!
 だがお前は女だ。わしの子を生む母となれ!」



 勇次郎かお前は。



第十四回 五招之戦
燎原火、司馬朗、呂布、華雄、袁泰

 呂布と華雄、燎原火はこの二人の猛将と対峙していた。

「奉先、お前なら何合要る?」
「五合」
「よし、ではわしも五合だ!」
(五合で俺を殺すだと…?)


 そのとき兵の間から声が上がった。
「五合で俺を殺すだと!?貴様ら俺を誰だと思っているんだ?」
 そこには禁軍の教頭・袁泰の姿があった。
彼もまた関東軍に通じていたのだ。
この場には袁泰と呂布、双方の兵がおり、数では袁泰の兵が勝っていた。
「華雄、ここは俺の陣地だ。もう逃げられんぞ」
「ふん、洛陽全体が西涼兵の陣地よ。わしを倒せたら逃がしてやるがな」
「そんな簡単な事でいいのか?後悔するなよ!」


 彼らの戦いを見て舌を巻く燎原火。
(五合どころか、五十合でも決着がつくかどうか…。
 五合じゃ俺でも無理だ。それを呂布は五合以内でやれるだと?)


 袁泰と華雄は激しく打ち合うが、どちらも一歩も引かない。
しかし袁泰が足元の火鉢を蹴り上げた。
火の粉を顔に受け、苦しむ華雄。
「戦場ではどんなものでも武器になる。
 もう少し早く俺の教えを受けるべきだったな。
 惜しいが、来世で俺を師と仰げ!」


 そのとき袁泰の背後には呂布の姿があった。
 袁泰は呂布に切りかかるが、腕をとられてしまう。
「袁泰、お前の時代はもう終わった!」
 そう言うと、呂布は袁泰の両腕を片手でねじ折り、顔面に火鉢を叩きつけた。
体に火がまわり、袁泰は手を離すよう懇願するが、呂布は手を離すどころか
袁泰の両足を踏みつけ、倒れることすら許さなかった。
叫び声を上げながら燃え続ける袁泰。
その様を見て、袁泰の兵は戦意を喪失、全員が投降した。

 袁泰の体は焼け落ち、呂布の手の中には袁泰の腕だけが残っていた。


 燎原火が華雄と袁泰の勝負を見て、「連我也不能、〜」と言っていますが、
これは「(たった五合では)俺でも勝てない」という意味ですよね?
(邦訳版では「俺でも勝てまい」としか書いてありません)
ぶっちゃけ、燎原火なら華雄たちに負けることは無いと思うのですが。






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