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大火に見舞われる洛陽に孫堅の姿が。
?「父上、父上…」
孫堅「そなたは…」
孫策「父上、策です」
孫堅「策?おお、私の息子は孫策だ」
「忙しさにかまけて、あれとも久しく会っておらん」
「黄巾が国を乱し、次いで董卓が政を乱し、諸侯らは誰もが野心を抱いている」
漢室が危機に瀕しているというのに、道義も何も有ったものではない」
「今もこうして洛陽が大火に見舞われている。
そなた、もし私の息子を見つけたら、消火の手伝いに来るよう伝えてはくれぬか?」
孫策「父上!俺はここにいます!分からないのですか!?」
「俺が…俺が孫策ですよ」
「俺が孫策です、孫策ですよ!」
「本当に…分からないのですか?」
孫堅「分からぬはずがなかろう?」
「あの可愛い子は将来必ずや大物になる」
「いつの日か、我ら親子は共に天下に名を馳せ、漢のため忠節を尽くすだろう」
「だが……そなたは自分が私の息子だと言う……」
「その薄汚れた面でよく言えたものだな!
どう見ても奸臣ではないか!」
「そんな愚かな息子を持った覚えは無いわ!」
孫策「違う!父上!それは誤解です!
俺は本当に孫策です!孫策なんですよ!」
「父上!」
それは孫策の見た夢だった。重傷を負い家臣らに見守られる孫策。
孫策「父上!」
「行ってはなりません!そちらは火が強い!
どこへ行こうというのです!?」
「父上!待ってくれ!」
「父上!行かないでくれ!」
暴れだす孫策。
黄蓋「伯符、落ち着け!それはただの夢だ!」
孫策「父上、父上ーッ!」
医師が孫権に告げる。
医師「二公子、矢の毒があまりにも強く、取り除くのは無理でした。
主公の両目は深くまで侵され…
もう完全に失明しております」
「目を摘出せねば毒が脳にまで至り、お命までも……」
孫策「父上!どこにいるんだ!?」
「何も見えないんだ!煙が目に入って目が…
目が痛いんだ!」
程普「伯符!傷口に触れてはならん!」
「早く取り押さえるのだ!」
孫策「俺の目は、俺の目は…
何も見えないんだ!」
「そうか……やっと分かったぞ…」
程普「伯符!そなたの傷はまだ治っておらん!暴れてはいかん!」
孫権「兄さん、僕です…。仲謀、仲謀です」
孫策「嘘だッ!貴様は于吉だ!于吉に違いない!」
「あの矢は貴様が射たんだろう!」
絶句する孫権。
孫策「貴様らは誰だ!?放せ!」
「この暗さだ、隠れていれば見つからないとでも思ったか!?」
「見つけた!逃げても無駄だ!部屋の隅に一人、
今は梁の上にいる!一人、二人…」
「ああ!貴様の分身がどんどん増えてやがる!」
「来いよ!この俺が貴様を恐れるとでも思ったか!皆殺しにしてやるよ!」
「父上!見ておいでですか!」
「策は今、黄巾の残党を誅殺しております!」
「賊だけじゃない!奸臣も……」
「俺が…漢に叛き、不義の諸侯を討伐したのも、ただ父上の仇に報いんがため!」
「奴らは貴方を殺したんだ……貴方を……殺した……殺した……」
「父上はもう死んだのか…父上が死んでもう何年も経つのか……」
「父上……父上……」
「策は…お会いしとうございます……貴方にお会いしとうございます!」
その場から駆け去る孫権。
部将「二公子、どこへ行かれます!お戻りくだされ!」
張昭「追うな、行かせてやれ」
「この三ヶ月間、あの子は本当に辛かったろう」
「将来背負わねばならぬ千斤の重圧と向き合ってきたのだ」
「十代の若者にどうして耐えられよう……」
孫権「兄さん…兄さん……」
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
寝ても覚めても、ただ涙があふれるばかり。
何故だ?
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